2020年10月26日

リテンションを意識した新規顧客獲得とは?

目次

Contents


LTV > CPAで考える

通販・ECにおいて「LTV(顧客生涯価値)」という指標をよく耳にすることと思います。
※LTV(ライフタイムバリュー)については、過去記事「サブスクリプションモデルとLTV」で詳しく説明しておりますので、そちらをご参照ください。

単品通販では浸透しつつある指標でありますが、実際にLTV基準で数字をみている企業はまだそれほど多くないのではないでしょうか。

今回は、多くの通販・EC事業者が力を入れている新規顧客獲得に目を向けてみます。
基本的に、新規獲得のための広告施策では、「CPA(Cost Per Acquisition)」で判断されることが多いと思います。
CPAとは、一人の新規顧客や注文・資料請求などの成果1件にかかった広告費用を表す数値で顧客獲得単価や成果単価と呼ばれます。

広告A:広告費500,000円 CV 100件 CPA 5,000円
広告B:広告費500,000円 CV 50件 CPA 10,000円

上記のように、それぞれ広告費50万円をかけた結果があったとします。
CPAで判断すると、当然、広告Aのほうがよく、さらにコストを投下して「獲得数」を増やしたいところですが、

広告A:広告費500,000円 CV 100件 CPA 5,000円 LTV 8,000円
広告B:広告費500,000円 CV 50件 CPA 10,000円 LTV 50,000円

もし、広告Aで獲得した顧客のLTVが8,000円、広告Bで獲得した顧客のLTVが50,000円だったら、どうでしょうか。
「ROI=利益÷広告費×100(%)」の計算でROIを算出すると、広告Aは160%、広告Bは500%となり、広告Bは10,000円の広告費をかけると50,000円の利益が出る計算が成り立ちます。極端なケースではありますが、この場合は広告Bのほうが収益性の高い広告といえるので、広告Bに予算を配分するべきでしょう。


もちろん、CPAも重要な指標ではあるのですが、CPAだけで判断してしまうと、「質」の最大化という視点では間違った判断をしてしまう可能性があります。

CPA:「量」視点の最大化
LTV:「質」視点の最大化

この違いをしっかり認識したうえで、それぞれを指標として計測していくべきと考えます。

また、広告の効果を測る指標として、「ROAS」と「ROI」というものがあります。

ROAS(Return On Advertising Spend)
 広告費に対してどれだけの売上を得ることができたのかを測る指標

 その広告が売上に貢献しているかどうかを判断することができます。
 「ROAS=広告経由の売上÷広告費×100(%)」で求めることができます。

ROI(Return On Investment)
 投資額に対してどれだけの利益を上げることができたのかを測る指標

 その広告が利益に貢献しているかどうかを判断することができます。
 「ROI=広告経由の利益÷広告費×100(%)」で求めることができます。

ROAS単体では、広告費用に対する売上だけを測定することになりますが、場合によっては、売上は高いが利益はマイナスというケースもあります。
ROIを活用することで、広告費用に対する利益もチェックできますので、新規獲得施策においては、両方の指標で計測することをおすすめします。

LTVから適切なCPAを算出する

では、新規顧客一人を獲得するために許容できるコスト(上限CPA)はどのように算出すればよいのでしょうか。

例えば、新規顧客の初回の平均購入単価が10,000円で、その粗利率が50%(5,000円)だとします。この場合、ほとんどの企業ではCPAを5,000円以下に抑えようとします。
しかし、LTVを正しく把握している企業は、逆にCPAを引き上げることで、多くの新規顧客獲得を可能にしています。
平均購入単価10,000円(粗利5,000円)で1年間に平均5回購入してくれることがわかっていたら、どうでしょうか。
その場合、粗利5,000円×5回=25,000円の利益が出ることになります。
つまり、投下コストの回収期間を「1年」とすれば、最大25,000円までCPAを引き上げることができるのです。

上限CPAを引き上げることができれば、これまでコストが高騰して実施できなかった広告媒体にチャレンジできるなど、積極的な新規獲得施策が可能です。
しかし、CPAを引き上げることができるLTVがあっても、正しく把握できていなければ、新規顧客を取り逃がしていることになります。


新規獲得施策で重要なこと

ここまでのお話で、新規獲得施策においても、広告ごとに「LTV」を計測することの重要性をご理解いただけたのではないかと思います。

過去記事「リテンションマーケティングとは?」でも述べていますが、新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍かかるといわれています。

5倍のコストをかけてやっとの思いで獲得した新規顧客ですから、1回限りの購入ではなく、できるだけ長いお付き合いをしたいですよね。
そのためにも、新規獲得施策で重要なことは「自社の商品やサービスに価値を感じてくれる人」をいかに増やすかということに尽きます。
そして、「自社の商品やサービスに価値を感じてくれる人」を増やすことができたかどうかを判断する指標が「LTV」なのです。

顧客のLTVを向上させるCRMの取り組みにおいて、本来、新規顧客獲得から既存顧客の活性化はひと繋がりでなければなりません。
優良顧客になりやすい顧客の獲得を促進し、LTV向上を目指す新規獲得施策は「リテンションマーケティング」の起点ともいえます。

 

記事 : H.U.

通販/CRM支援に関する詳細はこちらから