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はじめに
こんにちはS.Sです。これまでの私のブログでは、一般的なペーパーレス化のポイントや、機械整備業における導入事例をインタビューを交えてご紹介してきました。今回は、製造業に焦点を当ててお話したいと思います。
前々回:「手書き現場に革命!?業務運用を変えずに圧倒的に業務スピード向上を実現」
前回:「ペーパーレス化の利点と課題:企業が知っておくべきポイント」
製造現場の実態
製造現場には、検査票(図面)や作業日報などの紙があふれていませんか?
工程の機械化・自動化が進む製造業ですが、実際の現場では、今でも日々の作業で記録する紙の帳票が運用され、蓄積されています。
こうした運用の背景には、現場作業担当者様は「そういうものだから…」と割り切って淡々と対処していることが考えられます。
昨今、製造業は原材料の供給不安定化や円安による原材料価格の高騰を背景に、コスト削減が大きな課題となっています。
運用における無駄の削減や効率化を図るため、ペーパーレス化(帳票電子化)を検討してみてはいかがでしょうか。
今回は、製造現場の帳票を電子化する取り組みについて解説します。製造現場の帳票が抱える課題や、作業工数を削減するポイントも紹介します。
製造現場における帳票の課題
紙帳票の課題は、運用の負担が増加することです。実際の現場での運用は、次のような工程が考えられます。
①作業担当者が紙の帳票に手書きで記入
②作業担当者や管理者が手書きの帳票を収集し、データ入力
管理者が帳票を収集し、データ化する手段としては、Excelや基幹システムへの転記が考えられます。
手書きの内容を手作業で転記する作業は、当然ながら二重作業です。
業務が、初回の紙への手書きから転記が完了した時点で完結しますが、このプロセスには余計な時間がかかり、業務時間を圧迫します。この二重作業が大きな負担となっている現場も多いのではないでしょうか。
また、タイプミスや記入漏れの可能性があり、その発見は後工程でのインシデントによって発覚する場合が多く、戻り作業はさらに大きな業務負担となります。
※一般的に、戻り作業は後工程で発覚するほど、リカバリに時間がかかります。
このように、紙運用には多くの無駄やリスクが潜んでいます。
・帳票の電子化から実現できる3つのこと
帳票の電子化によって実現できることは、次の3つです。
・ペーパーレス化
・入力ミスの防止
・データ化
【ペーパーレス化】
製造現場の帳票は、稼働状況や検査票の記録が必要であり、その記入を手作業で紙に書いているケースが多く見られます。紙の帳票は、物理的に紙の書類が増えるだけでなく、手間や時間も増やしています。
ペーパーレス化は、紙の帳票から脱却するための取り組みです。その効果は、紙の削減だけでなく、現場作業で発生する次の課題解決にもつながります。
・紙の日報作成業務の削減
・管理監督業務の負担軽減
・紙の報告書などの保管業務削減
ペーパーレス化のメリットについて、こちらの記事でくわしく解説しています。
企業がペーパーレス化するメリット・デメリットを分かりやすく解説!
【入力ミスの防止】
手書きの紙帳票の場合、不備をチェックする方法としては、原本そのものを1枚1枚確認することや、紙からの手打ち作業の段階、あるいはインシデントが発生した際に発見されることが考えられます。このように、紙への手書きにはインプット段階でミスを防ぐ仕組みがなく、その精度は個人に依存してしまいます。結果として、リカバリーに無駄やムラを発生する可能性が高まります。紙の帳票運用自体が生産工程を遅らせる要因となることが少なくありません。
・作業日報
・不良日報
・設備管理日報
・検査表
・作業チェック票
これらの帳票を紙で記入することは、全体的な生産状況を遅らせる要因のひとつです。その改善として有効なのが、手書き文字からのテキスト化です。手書き文字からのテキスト化は、AI-OCRを使った手書き入力で実現できます。
AI-OCRは、手書き文字や印刷文字をテキスト化するOCR(Optical Character Recognition/Reader:光学文字認識)とAI(人工知能)が統合された仕組みです。通常のOCRよりも文字認識率が高く、テキスト化の精度向上が期待できます。
AI-OCRを活用した手書きからのテキスト化については、こちらのページでもご確認ください。
AI OCRとは?メリットや導入の注意点|RPAとの連携などを解説
【データ化】
手書き入力した情報をExcelなどに転記する目的は、経営分析ではないでしょうか。帳票の電子化は、情報をデータ化することで外部サービスとの連携を容易にします。
例えば、取引先の情報を管理する顧客管理システムとの連携ができれば、トレーサビリティの強化にも期待できます。トレーサビリティは、食品の流通経路を明確にする仕組みです。
・原材料の調達
・生産加工
・消費者への提供または廃棄
これらの経路を明確にすることは、企業の安全性と信頼性の向上にもつながります。食品製造の現場では、顧客評価を高める指標として有効です。
参考:農林水産省「トレーサビリティ」
帳票のデータ化は、流通プロセス上で発生する問題の早期発見にも役立ちます。その理由は、帳票の段階で記録をデータとして保存できるからです。現場入力の情報をデータ化することで、問題への迅速な対応が可能となります。
製造現場の電子化の先に見えてくるIoT化
食品製造現場の帳票電子化は、IoT(Internet of Thing:モノのインターネット)化への準備に役立ちます。IoTは、製造現場の設備や人をネットワークでつなげるデジタル技術であり、企業変革を目指すDXの取り組みとして注目されています。
食品製造企業がDXを目的にIoT化を進める場合、資金面や戦略面で大きな資金投入が必要になることが考えられます。しかし、そのような資金投入が全ての企業で実施できるわけではありません。
着実に取り組むには、小さな課題に対して資金を投入し、段階的に進める必要があります。製造現場の帳票電子化は、その小さな取り組みとして、確実に導入成果を実感できるものです。コスト削減の成果を積み重ねることで、将来的なIoT化も見えてくるでしょう。
【食品製造現場の帳票電子化の事例】
食品製造現場の帳票電子化について、実際の事例を紹介します。茨城県に本社を構える即席麺および乾麺製造販売企業「Y社」は、製造工程の検査項目帳票のデジタル化を実施しました。帳票電子化により、日々の作業時間を43分削減することに成功しています。
製造工程においてアナログな部分は、紙帳票の情報収集や手書きでの記入などです。アナログな仕組みが後工程の煩雑化を引き起こし、結果的に工数が増える状況が見られました。
同社の取り組みは、帳票電子化に向けたタブレットの導入です。また、タブレット入力から基幹システムへの連携も可能にしています。それにより、検査項目の重複や必要のない検査項目も検出できました。
製造の工程ごとに、手書きからPC導入のデジタル化を検証し、可能な工程からPC導入を実施しました。帳票電子化への移行は、不必要な項目の精査にも役立ちます。同社による帳票電子化の成果は次のとおりです。
帳票電子化の成果
生産性向上 | ・目標値:104%増 ・改善後数値:105%増 |
対象工程配置人数 | 変更なし |
対象工程作業時間 | 合計削減作業時間:1日43分(見込み) |
対象工程における生産量 | 実質的な生産量アップなし 労働生産性による算出では数値上「16食/mh」増 |
その他効果 | 電子化による効果 ・記録データの迅速な各部門間連携が可能 ・情報の多くをリアルタイムで確認可能 |
出典:農林水産省「食品製造業の生産性向上事例集」
まずは帳票の電子化で小さな変革から始めてみよう
製造業の現場では、手書きの帳票が課題となっています。課題を抱えたままでは、労力や時間の無駄は改善されません。帳票の電子化を進めないと、取引先からの印象にも影響が出る可能性があります。電子化している取引先は、紙の帳票に対して正確性を不安視する場合もあるからです。
タブレットによる手書きからのテキスト化は、電子化の入り口として有効な手段です。
タブレット上で手書きする帳票は、現場作業担当者の理解を得ながら進める小さな業務改善の取り組みとなるでしょう。DXによる大きな変に向けて、小さな変革を帳票の電子化から始めてみませんか。SHIORIは、そのような役割を持って利用できる手書きのデジタル化支援ツールです。
記事: S.S