戸田建設株式会社 様
業種:総合建設業
規模:売上高 5186億円 2020年3月期
2021年に創業140周年を迎える戸田建設は、国内の建築・土木事業にとどまらず、南北アメリカ大陸や東南アジア諸国などで数多くのプロジェクトを手がけています。
近年では気候変動や日本の人口構造の変化といった社会課題の解決に向け、浮体式洋上風力発電事業や農業の生産・加工・流通・販売機能を強化する施設建設を通じた地方創生事業にも力を入れています。
AppGuardが入っていないPCは持ち出し禁止。 大手建設会社の戸田建設は2019年から、こんな思い切った施策を導入しています。きっかけは、数年前から進めていた働き方改革とオフィス移転でした。
同社ICT統轄部インフラ・セキュリティ部の盛茂実氏は、こう振り返ります。
「これまで当社では、原則としてパソコンの持ち出しを禁止していました。しかし、本社ビルの建て替えをきっかけに、IT環境を見直しどこでも仕事ができる環境整備をはじめました」
139年の歴史がある戸田建設は長く、東京駅の八重洲口近くに本社を構えてきました。京橋地区の再開発に伴い、同社は2024年の完成を目指して本社ビルの建て替え工事を進めています。本社の建て替えという大事業をきっかけに、働き方そのものを根本から見直そう。そんな取り組みが進んでいます。
「そもそも感染させない。コンセプトが明確」
大規模な見直しの背景には、時間や場所にとらわれず、業務に合わせて自由に働き方を選択する、ABW(Activity Based Working)という考え方があります。
新たな働き方を推進するうえで、大前提となるのはパソコンのセキュリティの確保です。戸田建設インフラ・セキュリティ部では3年ほど前から、パソコンを含むエンドポイント(端末)のセキュリティ向上につながるアプリケーションの選定を進めていました。当初、有力な候補として浮上していたのは、EDR(Endpoint Detection and Response)プラットフォームでした。EDRは、パソコンなどのエンドポイントで攻撃を検知して対応する手法です。EDRの導入が決まりかけた2018年夏ごろ、AppGuardの紹介を受けたと言います。
「EDRは侵入されることを前提に、どこから入られたのかどの端末が被害をうけたのかを追う製品が多い印象があります。それに対してAppGuardは、そもそも侵入されても発症させない、感染させないというコンセプトが明確。運用する立場としては感触がまったく違っていました」
EDRを導入し、全社に配備されている約6,000台のパソコンのあちこちから「感染」のアラートが発せられたら、いまのインフラ・セキュリティ部の体制では対応しきれるか。導入を検討する中で、コストや人員に関する懸念も浮かんでいました。防御手法の異なる複数の製品を比較した結果、同社はAppGuardの導入の可否を決める本格的な検証に着手しました。
独自ツールで運用のあり方調整
検証の最初のステップとして、「ディスカバリーモード」でのAppGuardの運用があります。AppGuardは通常と異なる処理を止めますが、ディスカバリーモードでは実際には処理を止めず記録だけを残します。そうすることで、AppGuardをインストールした場合、どのアプリケーションに影響があるか検証することができます。盛氏は検証の時点で、こう考えていました。
「かなり厳しいツールですから、ここは止めなくてもいいのに、というところで止まってしまうケースもありえます。この課題を解決しないと全社的な展開はできません」
検証から導入までを務めたのは、AppGuard日本上陸当初から販売・導入サービスを手がける販売パートナーでした。
総合建設会社では、部門が違えば働き方は大きく異なり、多岐にわたる業務でさまざまなアプリケーションを使用します。
こうした環境では、例えば人事部門では問題なくAppGuardが運用できているのに、設計部門では何度も処理が止まってしまうといった事象も起こりえます。戸田建設と販売パートナーの担当者が月に1回のペースで会議を開き、検証作業で浮かんだ課題を洗い出しました。綿密な打ち合わせを経て、販売パートナーがAppGuardの機能を一時的に停止するツールなどを独自に開発し、課題の解決を図りました。
AppGuardなしでは持ち出し禁止
半年間の検証作業と準備を経て、本格導入が始まりました。これまで持ち出しが禁止されていたモバイルPCには、「持ち出し許可済み」のシールが貼られるようになりました。シールを貼る条件の一つは、AppGuardのインストールです。
戸田建設では、パソコンの更新に合わせて段階的にAppGuardの導入を進めていますが、2020年秋までに「許可済み」のシールが貼られたモバイルPCは2千台を超えました。盛氏は、AppGuard導入に伴う波及効果を感じていると言います。
「PCの使い方を厳格に管理することで、社員のセキュリティに対する意識も向上してきたように思います」
本社の建て替え工事が進む現在、戸田建設が拠点を置く「T-FIT HATCHOBORI」は、仮の本社にあたります。
スムーズなテレワークへの移行
2019年12月、T-FITへの移転とともに社員の働き方も大きく変わりました。モバイルPCが配備され、オフィス内のどこでも仕事ができることになりました。そして、必要に応じて在宅勤務やシェアオフィスの活用も認められます。新たな取り組みに着手してまもなく、新型コロナウイルスの世界的な大流行が始まりました。戸田建設も世界中の企業と同様に、本格的なテレワークへの移行を進めることになりました。慣れないリモート環境への移行で多くの企業が混乱する中、同社では比較的スムーズな移行ができたといいます。盛氏は、その大きな要因のひとつとして、場所や時間にとらわれない働き方を社内に広げるため、セキュリティを強化していたことを挙げています。
「どこでも同じように業務ができる環境整備を始めていたことが、コロナ禍への対応にもつながり、早い段階で準備ができたと思っています」
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