2023年2月24日

電子帳簿保存法とは -義務化におけるメリット・デメリット-

目次

Contents

電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類を電子データで保存することを認めている法律です。
こちらは2022年1月1日より改正施行されていますが、2023年12月31日までが猶予期間とされており、実際には2024年1月1日から義務化されることとなっております。

義務化されるまでに電子帳簿保存について準備しておく必要があります。

電子帳簿保存法について

「電子帳簿保存法」は、大きく3つの区分に分かれています。それぞれの区分ごとの制度に保存方法や対象書類が定められています。

・電子帳簿等保存
会計ソフト等パソコンを使用して帳簿や取引書類を作成、保存することを指します。

自己がコンピュータを使用して作成することを前提とし、帳簿に関しては、例として、仕訳帳、総勘定元帳、売上帳、仕入帳などがあげられます。
書類に関しては、決算関係書類が対象で、例として損益計算書、貸借対照表などです。また、取引相手に交付する書類の写しも対象にすることができ、例として見積書、請求書、納品書、領収書などの控えなどがあげられます。

紙保存は引き続き可能で、電子での保存要件を満たせば電子データでの保管も可能です。

・スキャナ保存
取引関係書類など紙で受領・作成した書類を画像データ化して保存することを指します。

文書保存の負担軽減を図る観点から、各税法で保存が義務付けられている書類は、要件さえ満たせばスマホやデジカメで撮影した電子データ形式でも保存することができます。
取引先から受け取った書類や自身で作成して取引相手に交付する書類の写しなどが対象で、例として、領収書、契約書、見積書などがあげられます。
スキャナ保存の制度を利用開始するにあたって、手続きは原則必要ありません。
要件に関しては区分毎に定められています。
契約書、領収書等の重要書類と、見積書、注文書等の一般書類に分けられ、それぞれ要件に違いがあるため確認してから保存を開始することが必要です。

紙保存は引き続き可能で、電子での保存要件を満たせば電子データでの保管も可能です。

・電子取引
メールやインターネットを介してやり取りした取引情報にかかわるデータを保存することを指します。

電子的に授受した取引情報をデータで保存する(電子取引の)場合、これまでは電子取引にも「紙に出力して保存」が認められていましたが、今後は電子データで受領した証憑は「電子データのまま保存」することが義務化されました。

保存に必要な要件としては、以下の4つのポイントがあります。

1.システム概要に関する書類の備え付け(データ作成システムのマニュアル等)
2.見読可能装置の備え付け(データが確認できるディスプレイ・プリンタ等)
3.検索機能の確保 (「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる)
4.データの真実性を担保する措置

今回の改正について区分ごとのポイントを以下に記載します。

◆電子帳簿等保存についての改正ポイント
・税務署長の事前承認制度の廃止。
・優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の整備。
・最低限の要件を満たす電子帳簿について、電磁的記録による保存等が可能。

◆スキャナ保存に関する改正ポイント
・税務署長の事前承認制度の廃止。
・タイムスタンプ要件、検索要件等についての要件緩和。
・適正事務処理要件が廃止。
・スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置が整備。

◆電子取引の電子保存に関する改正ポイント
・タイムスタンプ要件、検索要件等についての要件緩和。
・申告所得税及び法人税関連については、電子取引の取引情報について、出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置が廃止。
・電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、不正があった場合の重加算税として10%加重措置が整備。

※国税庁サイトPDF参照
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf

電子帳簿保存法対応のメリット

・書類のペーパーレス化
国税帳簿書類など紙で管理していると莫大な量になってしまいます。
それらは長いものだと10年近く保存しておかなければならないものもあります。
帳簿書類をペーパーレス、電子データ化してしまえば、紙で残しておく必要がなく、オフィスの省スペース化につながります。
さらには帳簿を印刷する際の用紙やインクの経費削減にもなります。

・経理業務の効率化
帳簿書類を電子データで管理することにより、オフィスに行かなくてもデータにアクセスすることが可能になり、テレワークでも経理作業ができるようになります。
後述しますが、電子帳簿保存法に対応するシステムの要件として、検索機能が実装されていることが前提となりますので、書類を探す手間が省け、業務効率化にもつながります。

・セキュリティリスクの低下
紙の帳簿書類だとオフィスのキャビネットに保管することになり、施錠管理する必要があり、物理的にこじ開けられてしまった場合、盗難の可能性もあります。
一方、データ化しクラウド上で保存しておけば物理的に盗難される可能性もなく、閲覧者も制限できるため情報漏洩の防止にもつながりセキュリティ強化ができます。
しかしセキュリティ強化するためにはセキュリティ対策されたシステムを選ぶことが重要です。

電子帳簿保存法対応のデメリット

・システム導入のコスト
電子データを扱うには、PCやタブレット、システムの導入が必須となります。
機材を導入するための初期コストもかかりますが、利用するシステムによっては利用料などのランニングコストがかかる場合もあります。

・電子帳簿保存法に対応したシステムを使用する必要がある
電子帳簿保存法に対応するには様々な要件をクリアしている上、運用方法も要件にかかわってきます。
その要件を満たしているか判断するにはスキルや知識が必要で、PC操作に慣れている方なら問題ありませんが、慣れていない場合は時間がかかってしまう場合があります。

・システム障害などのリスク
電子データを端末またはサーバーに保存する場合、端末の破損やシステム障害により、データが破損してしまったり、データにアクセスできなくなってしまったりする可能性があります。これらを回避する前に日々バックアップ体制を徹底し、データを管理する必要があります。

まとめ

少し複雑な要件がある電子帳簿保存法ですが業務効率化やペーパーレスに対応できることから推進している企業も増えてきています。
なにより業務の中心が紙による対面の作業からシステム化することによるメリットの多さが魅力です。新型コロナウイルス感染症の流行などを考えると業務が止まってしまうことも防ぐことができるため、ぜひこの機会に電子帳簿保存法の対応や、業務のIT化に興味を持っていただければと思います。

記事 : S.S

「再春館システム システムインテグレーション」はこちら