2020年12月21日

ウィズコロナ時代のお客様接点とリテンションをDXで進化させる(2)
 〜人を想う心を大切にする、個別対応〜

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日本では少子高齢化による人手不足などの影響で、デジタルによる業務変革の重要性が高まっています。また、コロナ禍のように急激に環境が変化する中、企業が予測できないリスクに迅速に対応したり、場所にとらわれないオンラインが前提の業務を行うために、DX(デジタルトランスフォーメーション)への注目が高まっています。
前回は「DX(Digital Transformation)とは?」を記載しましたが、今回はお客様接点とリテンションについて取り上げたいと思います。

DXの取り組みインタビュー(保険業界)

DXによる進化が求められる事が多い社会情勢の中、実際現場の状況を確認するために、保険業界でのお客様応対について、インタビューする機会を頂きました。
これまで保険業界では、ペーパレス化、インターネット販売、スマホ対応、データ分析基盤確立などをIT戦略として実施する企業が増えています。
私の個人的な仮説ですが、自動車保険、生命保険、医療保険、損害保険など多様な保険の種類が存在する中でお客様との契約は基本的に長期に渡る事が多く、実際の営業現場では、リテンション(継続)に繋がるお客様対応の抜本的変革がDX軸になるのではないかと考えています。

早速、業界の中での取り組みなどその現在を、お付き合いの長い保険代理店の担当H氏にインタビューした内容をご紹介します。

-保険代理店業界の顧客獲得のアプローチについて(保険代理店)-
「ひと昔前の保険の営業といえば、保険のセールスレディが会社のフロアにいて、新入社員をはじめ保険未加入の人へ、新規加入を勧める営業アプローチシーンを思い出しますが、現在では、完全に見なくなりましたね。各企業のコンプライアンスや情報セキュリティ観点ではNGなのでしょう。
最近は、年金保険や医療保険制度の説明とあわせて、個人的な財形貯蓄に関する考え方の研修にあわせ、生命保険、医療保険の宣伝を実施する代理店様もあれば、企業向けの商品の営業の場合は、ビジネスマッチングの場を設定し、付加価値提供と共に新規加入をご提案するための接点を獲得している企業も見受けられます。
しかしながら、自社でもいえる事ですが、今でも人のつながりを軸に営業をかけている部分も多々ありますね。」

-お客様商談における新規と既存の割合について(保険代理店)-
「現時点では、まだまだ新規のほうが圧倒的に多いですね。
いろいろな業界において、サブスクリプションのビジネスモデルが台頭してきている中では、われわれも既にご契約しているお客様へアップセル、クロスセルでのアプローチを実施したいと常々思っています。
保険って、医療制度の変化によって保険商品も時代にあわせて進化しているんです。(例えば1日入院でも入院給付対象になる等…)
にもかかわらず、お客様へ『保険契約を組み直しませんか?』と言えず、蓄積しているお客様情報の活用がなされていないのが恥ずかしながらの現状です。
結果的に、新規の広告宣伝、個々の新商品保険の新規営業に依存しています。」

-CRMシステムとリテンションマーケティングの取り組みについて(保険代理店)-
「自社の環境のお話をすると、CRMシステムという範囲では、実はかなり充実しています。大規模企業にも対応可能なクラウド型CRMアプリケーションをここまでカスタマイズするのかと思うくらい、自社の業務にあわせた形を実現していて、コンタクト履歴など、各種データの蓄積はしっかりとできています。
また、独自の仕組みで、多様な保険種類、複数に跨ぐ保険会社などの、枠組みを超えた形で、お客様の情報を管理する事が実現できています。
実際の契約の事務処理なども、保険会社の枠組みを超えて、直接オンラインでデータ連携が出来るようになっています。
他社の事例でも、そういった複数の保険会社の取引を一元管理するパッケージシステムも存在しているので、概念としても、実現できているのです。
ただ、リテンションにこの仕組みが貢献できているかというと、まだまだ業務としてそこへ向かえていませんねー。」

-DXの取り組み、今後の勧めるべき点について(保険代理店)-
「業界全体としては、契約署名の電子サイン化、申込みのオンライン化など、以前に比べでIT化は進められ、データ分析基盤も企業によって差はあるにしても、かなり進んでいると感じています。
インタビューを受け、既存のお客様への接点において、見直してみると、お客様のライフステージに変化があるタイミングでは、必ず見直しができるデータ蓄積状況であるにもかかわらず、実際は、お客様の個別対応が実施できてないなと気づきました。」

「自社のお話としてお恥ずかしい話ですが、お客様との関係性は、濃い関係であるべきと考えるも、現状ではまだまだ薄く、そもそも、アプローチとして電話で行う場合、これまで希薄だった関係から、突然電話でお話するという流れも不自然なのです。
現場では「電話ではダメだ」という空気感が流れています。これまでの、セールスの歴史がネックになっているとも考えられます。
また、業界の中での規制が多いのがネックにもなっています。暗黙のルール的なモノも存在しており、個人情報に関する活用方法においては、規制、環境、リテラシーなど、その他ボトルネック項目が多く存在しています。
これらに懸念事項をすべて突破できる実績が出来ると一気に進む可能性もあるのですがー。」

「現状としては、ITが関わる部分のフロントエンドは弱く、バックエンドの仕組みは出来上がりつつあるという状態ですね。
DXの取り組みはやはりこの感覚を打破できる流れが生まれる様な何か、お客様との接点で「革新」と呼べるビジネスモデル変化を生む何か、ここを見出すべき必要があるでしょうね。」


インタビューを終えて

実際には、他の企業との差異はあるかと思いますが、保険業界の現場における一企業様の事例として、いろいろお話を伺えたと思います。
お客様との契約、そのために必要なコールセンターや事務処理に関するITの仕組みにおいては、情報基盤の整備がかなり進めらていると認識しました。
その一方で、リテンション獲得業務における根本的な変革、IT・デジタルによる仕組み、いわゆるDXによるビジネスの再構築を実施する余地がまだあるのだと実感もしています。

お客様接点とリテンションをDXで進化させるためには、その流れを企業内につくる事が先決で、現場の流れを変えるためのインパクトあるモデル構築が必要と感じました。
DXに取り組む企業の様に、企業全体で取り組む姿勢が動き出している事や、社会情勢を追い風にしつつ、企業の中のボトルネックを解消しながら取り組んで行かねばならないようです。ただ、保険の契約をされているお客様の現状を考えると、ライフステージに変化が出たときに、コンシェルジュ的な役割で、いろいろと提案してくるエージェントのような存在は、利用者にとって嬉しいサービスモデルなのではないでしょうか。

私たち、再春館システムでは、CRM・リテンションマーケティングを取り組む中では「人を想う心を」大切にしています。
どうすればお客様に満足いただけるかかを担当者が自分で考え、相対するお客様に、どうすれば満足いただけるかを常に考え実行することを心がけています。

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記事 : Yoshifumi Tsujimoto

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